エプロンひとつで覚醒した婚姻第3話
第3話は約1,299文字で、このサイトに収録された3章の冒頭章のうち最後の章です。第4話は公式アプリで続きます。
「それにしても莉奈って、頑固だよな。どうしてわざわざ子供を作らないなんて言うんだ?」
「本当だよ。奥山グループは後継が大事なのに、旦那を不幸にする気かよ!」
周囲からの嘲笑を聞き、子供の頃からずっと私の味方だったはずの夏美が、蔑むような笑みを浮かべてこう言い放った。
「莉奈は甘やかされて育ったから、人の気持ちを考えるのが苦手なのよ」
そして夫である拓海は、夏美の手を握りながら、うっとりとした顔で答えた。
「夏美、俺のために子供を産んでくれて、本当にありがとう。奥山家に後継ができて、本当に助かった。
これからは二人で支え合って、一生離れないでいようね!」
その言葉を聞いて、私は涙がこぼれ落ち、足元が崩れそうになった。
実は、母は私を産む時に難産で亡くなった。
そのトラウマから、私は付き合い始めの頃に、子供は望まないと拓海に告げていた。もし子供が欲しいなら、別れようとも伝えた。
しかし、当時の拓海は私を強く抱きしめ、「お前に出会えただけで幸せだ。子供なんて必要ない。愛は少しも変わらないよ」と私に誓ってくれた。
その時は本気で信じていた。私は一生に一度の真実の愛を手に入れたと、自分は一番の幸せ者だと疑わなかった。
だが今、拓海が夏美に優しくする姿を見て、自分がどれだけ間違っていたか分かった。
個室で誰かが尋ねる。
「でも、莉奈に一生隠し通すつもり?
もう子供もいるんだから、正直に言えば?離婚して、堂々と一緒になればいいだろ!」
皆の視線が集まる中、拓海は首を振った。
「だめだ。夏美は莉奈と20年もの親友だ。親友と仲違いさせるわけにはいかない。
それに俺の仕事は莉奈と深く結びついている。莉奈と完全に縁を切ることはできないんだ。
だから付き合い始めた時から、俺と夏美は約束したんだ。二人の関係は一生莉奈に知られないようにしようと。離婚なんて論外だ」
拓海は、自分の財産や地位が私の支援で成り立っていることを知っていた。
結局、彼が私との結婚を続けていたのは、ただの打算に過ぎなかったのだ。
一同が感嘆する中、夏美に同情的な視線が注がれた。
「夏美さん、そんなにプライドが高いのに、子供を連れて一生陰に隠れてるつもり?」
夏美は鼻で笑うと、拓海の顔を向けさせ、その唇に情熱的なキスをした。
「戸籍上の関係なんて紙切れ一枚よ。私、気にしてない。
それに、妻より愛人、愛人より情事、莉奈の目の前でコソコソ楽しむ秘密の恋、考えるだけで血が騒ぐでしょ?」
自分の耳を疑った。これが、20年来の親友だった人の口から出た言葉とは到底信じられなかった。
華やかな席で彼らが笑い合う中、私はまるで地獄の底に突き落とされた気分だった。
一晩で、私は世界で一番幸せな女から、愛情も友情も裏切られた哀れな人になった。
悲しいことに、私の周りの誰もがこのことを知っていて、最後になったのは私だけだった。
私が親友だと信じていた人たちは、皆、彼らのために口裏を合わせ、私が騙されているのを見ながら、誰も教えてくれなかった。
涙を流しながらバーを出て、会社の法務部に電話をかけた。
「離婚協議書を用意して、奥山拓海に財産を一切渡さずに追い出す。
それから、もう一つ依頼があるが……」