スウィートの電撃婚:謎の旦那様はなんと億万長者だった!第1話
第1話は約2,809文字で、このサイトに収録された3章の冒頭章のひとつです。
南雲華恋は結婚した。
相手は八年も愛してたフィアンセの賀茂哲郎ではなく、
会って5分も経ってない、基本情報しか知らない男だった。
「後悔するなら、今のうちだ」
区役所のホールで、男は不関心そうな視線で南雲華恋を通りながら、口を開いた。
南雲華恋は裾を握りつめながら、頭の中に賀茂哲郎のその冷たい顔が浮かんできた。
三日前、いつも彼女のことを避けていた賀茂哲郎から晩ご飯の誘いがきた、その電話を出た時、
彼女は自分の八年間の努力が、ついに報われたとバカのように思った。
念入りしたコーディネーションの彼女を待っていたのは、賀茂哲郎だけではなく、彼と手をつないだまま、幸せそうな笑顔で車椅子を座っている、
いとこの南雲華名もいた!
二人の関係をまだ理解しているうちに、賀茂哲郎からもう一枚の爆弾が投げられた。
「お前の腎臓を華名に移植しろ、そうすればお前と結婚してやる」
南雲華恋は撃たれたように、信じられない目で賀茂哲郎を見ていた。
しかし男の目はいつものように、嫌悪と冷血が満ちた目だった。まるで南雲華恋は八年間の婚約者ではなく、家族を殺した仇のようだった。
南雲華恋は絶望を覚えた。
賀茂哲郎とは小さい頃からの婚約で、16歳の時、帰国してから、彼のことをどうしようもないほど好きになった。
それから八年間、彼のために、洗濯も料理も、彼にふさわしい妻になるため、何でも学んできた。
彼が自分のことを嫌いだと分かっていても、変わらず愛していた。
全ていつか、彼が自分の気持ちに気づいて、好きになって結婚できるためだった。
しかし現実はその幻想を打ち破った。好きになるどころか、自分のいとこと恋した。
愛する人を助けるために、好きでもない女と結婚するまで!
南雲華恋がどれだけ彼の妻になりたかったのか知っているのに、あえて取引の形でそれを言い出した。
まさに侮辱だ!
長年の愛が、憎しみに変わった!
殺したいほど憎い!
しかし彼女は自分を守る手段さえない。
あの夜、賀茂哲郎からの言葉は今でも響いている。
「これは頼みではない、知らせだ。断ったら、形だけの結婚もなくなるぞ」
南雲華恋は強く手を握って、椅子の冷たさで自分を冷静させた。
三日も前のことだったのに、思い出すと、怒りと絶望が抑えられないほど溢れてくる。
賀茂哲郎は冗談を言う男ではないこと、彼女はよく知っているからだ。
北城第一家族、賀茂家の後継者として、彼には自分の目的を達成させられる方法と権力を持っている。
賀茂家現任当主がいなかったら、結婚の取引持ち出すところか、今頃手術台に寝ているだろう。
だから、自分を守るために、他の人と結婚して、その話をなかったことにするんだ!
そう思うと、南雲華恋ははっきり言った。「後悔なんてしませんわ!」
そして彼女は隣の男に目を運んだ。
この男の名前は賀茂時也、賀茂哲郎と同じ苗字だ。
しかし婚姻紹介所の資料によると、彼は賀茂家と何の関係もない、ただの平社員だ。
唯一の関連性と言えば、彼の勤務先である会社は、その賀茂家に所属する会社だ。
しかし資料からごく普通のこの男に見える彼は、あまりにも美しい顔、高くて細いスタイル、ピッタリの肩幅と腰回りを持っている。
この世の者ではないほど完璧だ。
南雲華恋が初めて見た時、どこかの会社のCEOだと思った。
「南雲さん」
あまりにも熱い少女の視線に、賀茂時也は少し微笑んで、小悪魔のような声で話しかけた。
まるで人を誘っているような声だった。
南雲華恋がふと気づき、気まずそうに耳元の髪を整えて、赤くなった頬を隠した。
その隠し隠さずの挙動を見て、瞳の奥で微笑んでいるように「僕たちの約束は、まだ覚えているかい」
「もちろん......」賀茂時也の視線の中で、彼女はゆっくり話した。「結婚は三年間、婚姻が続いている内に、相手のプライベートに一切干渉しない、
相手を好きになることもダメ、もし片方に本当の好きな人ができたら、婚姻関係即終了とする、以上ですね」
賀茂時也は満足した顔で頷いた。
南雲華恋は疑問そうに「どうして急にそれを聞きましたの?」
賀茂時也が安閑に指を擦って、少し顔を下げた、ちょうどまなじりのほくろが見える程度で「南雲さんが僕を好きになったら困るだから」
南雲華恋が一瞬呆れた。
何度も深呼吸してから、寂しそうに笑った「大丈夫ですよ、私は男を好きになりませんから!」
これから、誰も愛さない!
傷つけられるのは、一度きりでいい!
賀茂時也は眉をあげた、その下の真っ黒の瞳はこぼした墨のように深い、しばらく経ったら、気に入ったように「ならいい、行こう」
話の切り替えが速かったから、南雲華恋は自分たちの番だってことが分かったのは、数秒後だった。
そして立ち上がると、ちょうど前の新婚夫婦が幸せな顔で目の前を通った。
思わず顔が暗くなった。
賀茂哲郎とのこういう光景、何度も夢見た。
実際賀茂時也と会う前にまで、賀茂哲郎の提案に悩んでいた。
しかし待ち合わせ場所の喫茶店に着いた時、賀茂哲郎から電話が来た。
その電話の中で、彼は待ちかねた口調で「いつ病院でサイン」って聞いた。
その話が耳にした時、驚きながら、南雲華恋は笑いたくなった。
自分が彼と結婚できるであれば、何もかも捨てられるって賀茂哲郎はそんなに自信持っているの?
その一瞬、全ての迷いが吹き飛んで、他の人と結婚することに決意した。
「どうした?」賀茂時也の声が、彼女を連れ戻した。
新婚夫婦から目をそらして、胸の中の煩悩を吐き出すように息を吐いた、少し涙目になったが、眼差しは真っすぐで「なんでもありません」
これから、賀茂哲郎とは、何の関係もなくなる。
そこを思うと、なんだか解放されたような気分になった。
賀茂時也は目の前の少女に深い事情があると分かっているが、余計なことを言わなかった。
彼には妻が必要だから。
そこでちょうど紹介所から南雲華恋の情報が来た。
双方理由は違うが、目的は同じだ。未来に無関心だから、過去も聞く必要がない。
30分後、婚姻届の提出が終わった。
区役所からの証明を見て、南雲華恋は腎臓のところを触りながら、少しほっとした。
これがあれば、無理やり結婚して腎臓手術させることは少なくともむりだ。
しばらくは安全だ。
しかし......
両親のことを思うと、彼女は顔を下げた。
結婚の話、まだ誰にも言ってない、もちろん両親もだ。
その二人の願いは、彼女が賀茂哲郎と結婚できることだ。
特に南雲家が突然の凶変で、四大家族から誰も知らない三流家族になってから、なおさら、
彼女が賀茂哲郎と結婚して、賀茂家の力を借りて四大家族の位置に戻ることを望んでいる。
そんな両親に、もし彼女が一般人と結婚したことがばれたら、絶対血相を変えるだろう。
「次はご両親に挨拶だな」賀茂時也は適当に証明書をポケットに入れて、シャツの下の金色の腕時計を見て言った。
形だけの結婚とはいえ、形だけでもすべきことをしなくては。
南雲華恋はびっくりした。「い、いまですか!?」