章へスキップ

後悔しても遅い、裏切り者には地獄を第1話

第1話は約3,208文字で、このサイトに収録された3章の冒頭章のひとつです。

父の会社が罠に嵌められ、一夜にして倒産の危機に瀕した。

上場企業の社長である婚約者の葛城蓮(かつらぎ れん)は、必ずこの難局を救ってみせると、力強く約束してくれた。

私はその言葉に涙が出るほど感謝し、会社の最後の資産をすべて彼に預け、担保にしてもらった。

しかし、会社が差し押さえられる一時間前になって、彼とは突然連絡が取れなくなり、携帯電話も電源が切られてしまった。

私は必死で共通の友人たちに連絡を取ったが、申し合わせたように「知らない」と繰り返すばかりだった。

なす術もなく、自社の資産が凍結されていくのをただ呆然と見るしかなかった。

全てが終わった頃、彼からようやく電話がかかってきた。

その声は、ひどく不機嫌そうだった。

「今、地方に出張中なんだ。些細なことでいちいち電話してくるな」

会社が終わったことさえ伝える間もなく、私は彼のアシスタントのSNS更新を目にしてしまった。

写真の中の彼は、以前なら見向きもしなかった焼肉店で、煙にまみれながらせっせと肉を焼いていた。

コメント欄にはこうある。

【羨ましすぎる!優奈ちゃんが地元の焼肉が食べたいって言っただけで。

蓮さんたら数億円の商談を放り出して、何百キロも車を飛ばして来てくれるなんて。

最高ですよ!】

その時、父はショックのあまり脳卒中で倒れ、ICUに運び込まれていた。

頭の中が真っ白になり、耳鳴りがした。

彼にとっては、愛人と地元に行って焼き肉を食べることのほうが、私たちの会社の存亡よりも重要だったのか?

* * *

父の会社が罠に嵌められ、一夜にして倒産の危機に瀕した。

上場企業の社長である婚約者の葛城蓮(かつらぎ れん)は、必ずこの難局を救ってみせると、力強く約束してくれた。

私はその言葉に涙が出るほど感謝し、会社の最後の資産をすべて彼に預け、担保にしてもらった。

しかし、会社が差し押さえられる一時間前になって、彼とは突然連絡が取れなくなり、携帯電話も電源が切られてしまった。

私は必死で共通の友人たちに連絡を取ったが、申し合わせたように「知らない」と繰り返すばかりだった。

なす術もなく、自社の資産が凍結されていくのをただ呆然と見るしかなかった。

全てが終わった頃、彼からようやく電話がかかってきた。

その声は、ひどく不機嫌そうだった。

「今、地方に出張中なんだ。些細なことでいちいち電話してくるな」

会社が終わったことさえ伝える間もなく、私は彼のアシスタントのSNS更新を目にしてしまった。

写真の中の彼は、以前なら見向きもしなかった焼肉店で、煙にまみれながらせっせと肉を焼いていた。

コメント欄にはこうある。

【羨ましすぎる!優奈ちゃんが地元の焼肉が食べたいって言っただけで。

蓮さんたら数億円の商談を放り出して、何百キロも車を飛ばして来てくれるなんて。

最高ですよ!】

その時、父はショックのあまり脳卒中で倒れ、ICUに運び込まれていた。

頭の中が真っ白になり、耳鳴りがした。

彼にとっては、愛人と地元に行って焼き肉を食べることのほうが、私たちの会社の存亡よりも重要だったのか?

最後の備品が運び出されると、かつて活気に満ちていたオフィスは静寂に包まれた。

父が一代で築き上げた会社は、この瞬間、完全に終わりを迎えた。

淡々と清算作業を進め、撤収していく銀行員たちを見つめながら、私の思考は停止し、心臓の鼓動さえも止まったかのような錯覚に陥った。

隣で、父の秘書が重い口を開いた。

「お嬢様、万策尽きました。

もし当初の予定通り、葛城社長からの入金さえあれば……

会社にはまだ救いがあったかもしれません」

私は無意識にスマートフォンの画面をスワイプした。

発信履歴はすべて「葛城蓮」で埋め尽くされている。

彼が消えてからというもの、私は夜が明けて日が高く昇るまで、十分おきに電話をかけ続けた。

不在着信は三百件を超えている。

それなのに、彼は一度もつながることはなく、まるでこの世から消えてしまったかのようだった。

今にして思えば、彼は最初から周囲に口裏を合わせさせて私を騙し、アシスタントの森下優奈 (もりした ゆうな)と「完璧な彼氏」ごっこに興じていたのだろう。

負債額があまりに膨大だったため、破産手続きは瞬く間に進められた。

オフィスにあった私の私物さえも、差し押さえの対象として容赦なく運び出されていった。

数時間後、裁判所の執行官から手渡されたのは、すべての資産が差し押さえられたことを示す通知と、途方もない額の債務通知書だけだった。

それを手に、私は幽霊のようにふらふらと家へ戻った。

ドアを開けた瞬間、病院から電話がかかってきた。

「もしもし、篠原壮一郎(しのはら そういちろう)さんのご家族ですか?

篠原壮一郎さんが脳卒中で倒れ、現在処置室で手当てを受けています。

至急に、中央病院へお越しください」

その知らせを聞いた瞬間、数日間必死に保ってきた理性の糸が、ぷつりと音を立てて切れた。

私はなりふり構わず病院へ駆けつけ、ICUの前で膝から崩れ落ちると、声を上げて泣きじゃくった。

父は蓮を実の息子も同然に信頼していた。

蓮がまだビジネスの世界に足を踏み入れたばかりで、基盤さえ持たなかった頃。

父は自社の精鋭チームを彼に付け、一人前になるまで徹底的に支え続けたのだ。

それなのに、父の会社が倒産するというその時、彼は優奈と遊び呆けていたなんて。

息が詰まるほど泣きじゃくっていた時、電話の着信音が鳴った

私は無理やり涙を拭い、震える声を必死に押し殺して電話に出た。

「篠原麗華(しのはら れいか)、空港に着いたぞ。

今すぐ車で迎えに来い。お前のところの融資案を検討してやる」

蓮の声は平然としていて、謝罪の欠片もなかった。

私は唇を噛みしめ、感情を抑えようとしたが、涙はどうしても止まらなかった。

「もう手遅れよ。会社は倒産したわ。

父さんもICUで生死の境をさまよってる……これで満足?」

電話の向こうで一瞬沈黙が流れた後、すぐに苛立ちを露わにした声が響いた。

「なんだその態度は!出張中だと言ったはずだ。

会社が倒産したなんて嘘までついて、俺の気を引こうとするのはやめろ!

事情を知らない奴が聞いたら、俺が会社を潰したみたいに誤解されるぞ!

くだらない言いがかりはやめろ、さっさと迎えに来い!」

反論する隙も与えず、蓮は一方的に通話を切った。

通話を切ろうとしたその瞬間、追い打ちをかけるように優奈のSNS更新通知が画面に表示された。

【やっぱり世界一の彼氏を持つと違うな。

生理痛でお腹が痛いって言っただけで。

市内の名医を全員呼び集めて診察させてくれたの】

添付された写真には、優奈のお腹を優しくさする蓮が写っていた。

甘やかで、溺愛に満ちた表情を浮かべている。

この数日間、私が不眠不休で走り回り、身も心もボロボロになりながら耐えていた間、蓮は優奈のご機嫌を取るのに夢中だったのだ。

婚約して三年の間、彼が私にこれほど優しくしてくれたことなど一度もなかった。

生理中にうっかり彼の車の助手席を汚してしまった時など、彼は激昂し、私を高速道路に置き去りにしたことさえある。

このあまりにも残酷な格差に、私はもう一秒たりとも耐えることができない。

【婚約は破棄よ、これからは赤の他人。二度とその顔を見せないで】

メッセージを送ると、私はスマホに残っていた彼との写真をすべて削除した。

銀行カードを握りしめ、治療費を払うために窓口へと急いだ。

「申し訳ございません、残高不足で決済ができませんでした。

残高が何十円しか残っていないようなのですが……」

「そんなはずはありません!」

私は耳を疑った。

「母が残してくれた結婚資金の五千万円がまだ入っていたはず。

どうして急に無くなった?」

慌てて銀行へ問い合わせに行くと、血液が凍りつくような答えが返ってきた。

「現在の残高は確かに七十六円です。

一時間ほど前に、大きな引き落としがございました。

マンションの決済として、ちょうど五千万円が引き落とされております」

第4話は公式アプリで閲覧できます

この目録には次の本の第1章から第3章までが収録されています: 後悔しても遅い、裏切り者には地獄を。本の残りは公式アプリでお読みいただけます。

お客様のコード R95291

  1. スマートフォンに公式アプリをインストールしてください。
  2. アプリを開き、コードを入力するとこの本に移動します。
アプリで続ける

カタログの言語を選択

6言語、ひとつの総合カタログ。言語ごとに独自の請求記号と冒頭の章があります。