義姉を優先し、我が子を見殺した夫への復讐第1話
第1話は約1,890文字で、このサイトに収録された3章の冒頭章のひとつです。
妊娠8ヶ月、激しい陣痛に襲われた私は、夫に病院へ連れて行ってほしいと懇願した。
だが彼は「我慢しろ」と冷たく言い放った。
理由はただ一つ、亡き兄の妻・朝倉心音(あさくら ここね)の出産日と重なっていたからだ。
夫の朝倉陽介(あさくら ようすけ)は、私の子供が朝倉家の「初孫」になることを阻止するため、-20℃の冷凍庫に私を閉じ込めた。
「初孫の座は、義姉さんの子供でなければならない。
彼女にはもう何もないが、お前には俺の愛があるだろう?だったら、家の財産くらい彼女の子供に譲ってやれ。
冷凍庫にいれば体も冷えて、産まれるのを少しは遅らせられるだろう。
義姉さんが無事に産み終えるまで、そこでじっと待っていろ」
陣痛の激痛で私はなりふり構わず、床に這いつくばって病院へ連れて行ってくれと泣きすがった。
だが、彼はそんな私を容赦なく蹴り倒した。
「俺が何も気づいてないとでも思ってるのか?
どうせくだらない小細工を使ってわざと早く産み、親父の遺産を横取りする気だろ!
どこまで性根が腐ってるんだ?
自分と子供のために、少しは徳を積んだらどうだ!」
私は血の気を失った顔で、必死に弁解した。
「もうすぐ生まれるのよ……財産なんていらない、全部あげるから……!
私はただ、この子が……無事に産まれてくれればそれでいいの!」
しかし陽介は、私がすがりついた彼のズボンの裾を乱暴に引き剥がし、鼻で冷笑した。
「お前みたいに計算高い女の言うことなんか信じられるか!
俺だってこの子の父親だ、誰よりもこの子が無事に生まれてくることを願ってるさ。
義姉さんが無事に産み終えたら、お前を迎えに来てやるよ」
後になって、無事に産まれた義姉の赤ん坊を抱き、彼はようやく私のことを思い出し、秘書に私を迎えに行くよう命じた。
しかし、戻ってきた秘書は歯の根を合わさずに、ガタガタと震えながらこう報告したのだ。
「奥様も……お腹のお子様も……もう亡くなりました……」
* * *
這うようにして、やっとの思いで扉までたどり着いた。
しかし、無情にも扉がロックされた瞬間、私の指が冷たい鉄の扉に激しく挟まれ、骨が砕ける生々しい音が響き渡った。
それに、押し寄せる激しい陣痛に私はたまらず叫び声を上げた。
だが、扉の向こうにいる陽介は自分のことに夢中で、私の声など全く耳に入っていないようだった。
その時、下半身から生温かい液体が流れ出し、お腹の中の子が少しずつ下へと降りてきているのを感じた。
とてつもない恐怖が全身を支配したが、私は必死に自分を落ち着かせ、スマホを取り出して助けを呼ぼうとした。
だが、陽介は私のSIMカードを抜いていたのだ!
お腹の子が激しく動き回り、まるでお腹の皮が今にも引き裂かれそうだった。
全身を濡らしているのが汗なのか血なのか、もう自分でも分からない。
流れ出た体液はすでに床の上でシャーベット状に凍りついていた。
私は残された最後の力を振り絞って叫んだ。ほんのわずかな希望でもあるのなら、絶対に諦めたくなかった。
やがて、扉の向こうから足音が聞こえてきた。
私はすがるように叫んだ。
「お願い、助けて!冷凍庫に閉じ込められてるの、もう産まれそうなの!」
何度も何度もその言葉を繰り返し、ようやく助かるかもしれないと思ったその時、外から女の声が聞こえた。
「星野瑠夏(ほしの るか)、あんたもとうとう年貢の納め時ね。
お兄ちゃん、もっと早くあんたを痛い目に遭わせておくべきだったのよ!」
陽介の妹、朝倉美羽(あさくら みう)だ!
私は目をきつく閉じ、できる限りはっきりとした声で訴えかけた。
「美羽ちゃん、お願いだから先に出して!もうすぐ生まれるの、本当に限界なの!」
美羽は急に怒り出し、扉をガンッと激しく蹴りつけた。
「ここから出て、義姉さんの出産を邪魔する気!?
お兄ちゃんは今日、あんたが変なことしないように私に見張り番をさせたのよ!
少しはお兄ちゃんを安心させなさいよ。ただでさえ忙しいのに、これ以上迷惑かける気?
うちの財産は、うちの家族のものなのよ!あんたなんかが狙っていいものじゃないわ!」
強烈な陣痛が襲い、私はまた悲鳴を上げた。息を弾ませながら、必死に彼女に誓った。
「朝倉家の財産なんて、1円たりとも欲しくない。
だから、陽介にそう言ってここから出して。
お願い、これからは二度とあんたたちの前には姿を現さないって約束するから!」
しかし美羽は私の叫び声に酷く不快感を抱いたように、うんざりした声で怒鳴った。
「頭おかしいんじゃないの!ギャーギャーうるさいわね!
これ以上騒ぐなら、その口を縫い合わせてやるわよ!」
そう言い捨てると、彼女はスマホを取り出して誰かに電話をかけ始めた。