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十年も婚約していた彼に黙って、私は別の人と政略結婚した第3話

第3話は約1,983文字で、このサイトに収録された3章の冒頭章のうち最後の章です。第4話は公式アプリで続きます。

彼らがイチャイチャしている様子なんて無視して、私はさっさとドアを開けて出ていった。

呼んでおいたスタッフもちょうど到着していて、私の荷物を車に運んでくれた。

親友の家に着いて、スマホを開いてメッセージの返信でもしようかと思ったら、インスタの通知が目に飛び込んできた。

【この前、ご主人様と一緒にオーロラを見に行った時に買ったお土産、みんなに配りました〜】

添付されてる写真は、成瀬と薫の顔が密着した自撮り。その隣には大きな段ボールが2箱。

コメント欄はお祭り騒ぎだ。

【えっ、ご主人様?もう彼氏でしょ?】

【薫ちゃんのご主人様イケメンだし、めっちゃ優しいじゃん〜】

【お似合いすぎる!付き合っちゃいなよ!】

成瀬がそのコメントに「いいね」を押し、薫はすぐさま照れたスタンプで返信している。

そして、薫のフォロワー数は一気に増えた。

成瀬の別荘のメイドグループにも、感謝のメッセージがたくさん届いていた。

【旅行中なのに、私たちのことまで気にかけてくれてありがとう!】

【さすが億万長者、太っ腹!薫ちゃんもありがとう〜】

昔、成瀬と同棲していた頃、彼は仕事で食事を忘れたり、偏食だったりしたので、私はわざわざ連絡用のグループを作って、みんなが成瀬の生活をちゃんとサポートできるようにしていた。

でも、薫が入ってきてから、成瀬と私の距離はどんどん遠くなっていき、私もそのグループを気にしなくなっていった。

もう全部見る気にもなれず、私はグループをあっさり解散した。

解散ボタンを押した瞬間、ふと思い出す。そういえば、成瀬もグループの一員だった。

私の配慮を知って、彼もグループに入ってきて、私が忙しかったり体調を崩した時は、彼もグループで私の様子を聞いてくれていた。

毎年の恋愛記念日には、成瀬が自分で長い食材リストを書いてメイドたちに準備を頼み、私のために手作りのキャンドルディナーを用意してくれた。

でも、それも全部、薫に壊された。

彼女は不器用で、成瀬のコーヒーをこぼしたり、私のホットミルクをぶちまけたり、何か失敗してもグループで泣きながら謝るだけで、全然直さない。

成瀬は最初こそ呆れていたけど、最後には「おバカちゃん」と甘やかして、後始末までしてやっていた。

一度は薫をクビにしようとしたけど、成瀬に止められた。

「薫はまだ子供だよ。十八歳で働きに出てるんだ、もう少し大目に見てやって」

メイドの中には、薫が足を引っ張っていると不満を漏らす者もいたが、それを耳にした成瀬は、即座にそのメイドをクビにした。

結局、私がその人に新しい仕事を探してあげて、そのシングルマザーはやっと生活が安定した。

夜、電気を消してベッドに入ろうとしたとき、ふと自分の中指にまだ婚約指輪があるのに気づいた。

私はそれを外し、指先でリングの模様をなぞる。

この婚約指輪は、成瀬がゼロから勉強して手作りしてくれたものだ。

何度も指を怪我しながら、最後は不器用な手で私たちのイニシャルを内側に刻んでくれた。

「この指輪は、俺の誓いだ。清奈、この指輪を着けて、お前の人生を俺に預けて。永遠に、ずっと一緒にいよう」

今では、その誓いも錆びつき、愛した人とも別れる運命になった。

私は宅急便を呼んで、その指輪を送り返した。

ちょうどその時、父からも政略結婚の相手の情報が届き、一週間後に結婚することになった。

翌朝早く、成瀬が私の部屋の前で待ち伏せしていた。

ドアを開けると、彼は焦った様子で詰め寄ってくる。

「清奈、なんで指輪を送り返したの?

別れたいってこと?昨日のあれだけで?」

私はただ静かに彼を見つめた。

「指輪、もうサイズ合わなくなったの」

成瀬も自分が少し取り乱していることに気づいたのか、謝ってきた。

「ごめん、指輪を返されて動揺しちゃって。

せめて一言メッセージくれればよかったのに」

私はもう彼の言い訳を聞く気にもなれず、何も言わなかった。

だって、彼は薫を連れてオーロラ旅行に行き、私はウェディングサロンで四時間も一人で待って、何度もメッセージを送ったのに、全部ブロックされた。

目の前のこの男は、もう私だけを見てくれる婚約者じゃない。

「ここは親友の家だし、用がないなら帰って」

そう言ってドアを閉めようとした瞬間、成瀬は私を強く抱きしめた。

「婚約指輪が合わなくなったなら、今度は結婚指輪を作るよ。前のドレスは一緒に見に行けなかったけど、新しい日程を決めたから、明日こそ一緒に見に行こう」

彼はまるで私たちの未来を大切にしているかのように、丁寧に話す。

でも、その時、私は彼の首筋に残ったキスマークと、彼の服に残る薫の香水の匂いに気づいてしまった。

そうだよね。十年も愛し合った婚約者を簡単に後回しにできる男に、どんな深い愛情が残っているのだろう?

私は彼を突き放して、ただ笑った。

「明日また考えるわ」

成瀬、どうしてそんなに自信満々で、私が必ずあなたと結婚すると思えるの?

冒頭章はここまで

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