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遅すぎた愛情なんていらない第1話

第1話は約1,499文字で、このサイトに収録された3章の冒頭章のひとつです。

私が十八歳の誕生日を迎えた日、叔父の篠原聖哉(えはら せいや)が私の日記を見つけた。

「篠原晴美(しのはら はるみ)、お前、こんな汚れた考えを持ってたなんて……信じられない!お前がそんな人間だったなんて!」

彼は怒鳴るように私を責め立てた。

私はすぐに謝った。「ごめんなさい、叔父さん。あなたのことを好きになっちゃいけなかった……」

だけど、彼は私を拒むようにして、すぐさま私を海外に送り出した。そしてその背中を見送る間もなく、彼は初恋の人と盛大な結婚式を挙げた。

数年後、私は一人の子どもを連れて帰国した。

聖哉は目を見開いて、私を凝視した。

「その子は……誰だ?」

私は子どもをぎゅっと抱きしめながら答えた。

「私の息子。三歳よ」

そして顔を横に向けて、江原陽翔(えはら はると)に優しく声をかけた。

「陽翔、挨拶して」

* * *

飛行機に乗った瞬間、まだどこか現実味がなかった。

海外に出てからの六年間、一度も帰国できるなんて思っていなかった。

だって、あの時聖哉が言ったのよ。「もう二度とお前には会いたくない」って。

でも、今回の帰国は彼の方からの申し出だった。すべてを手配してくれて、清水夏子(しみず なつこ)がジュエリーデザインコンテストで優勝した祝賀パーティーに出席するために、私を呼び戻したのだ。

あの時は遠くへ行きすぎて、飛行機も乗り継ぎ二回。

着陸してから、腕の中の篠原陽翔(しのはら はると)が少しずつ目を覚ました。

見知らぬ場所に来たせいか、不安そうな顔で私に手を伸ばしてきた。「ママ!」

そのか細い声に胸が締め付けられて、私は急いで彼を抱き上げた。

到着ロビーを出たところで、タクシーを呼ぼうと手を挙げた瞬間、ポケットの中の携帯が鳴った。

その番号はもうとっくに削除したはずなのに、どうしても忘れられない番号だった。

電話が自動的に切れるまで、ただ立ち尽くしていた。そしてすぐに、二度目の着信。

私は深呼吸して、通話ボタンを押した。

江原聖哉(えはら せいや)の声が、すぐに耳に届いた。

「空港出た?助手を向かわせてある」

その声は昔と変わらず、冷たくて、よそよそしいほどに事務的だった。

私は苦笑して答えた。

「いいよ、自分でタクシー呼べるから」

聖哉は少し驚いたように黙った。

無理もない。あの頃の私は、彼にすべてを世話されていた。

一緒に暮らしていた数年間、食事も服も生活のすべてに手が行き届いていた。専属の運転手までいたのだから、自分でタクシーなんて呼ぶ必要もなかった。

沈黙ののち、聖哉が口を開いた。

「助手に迎えに行かせた。車のトランクに、俺が夏子に買ったプレゼントが入ってる。忘れずに渡してくれ」

聖哉は、夏子のことを本当に大切にしている。

あの頃、彼は夏子に豪華な結婚式を用意し、希少なダイヤを使って婚約指輪を特注で作らせた。

それが全て、彼の愛の証だった。

「分かった」

私は淡々と返事をして、早くこのやり取りが終わることを願った。

だけど聖哉は、電話を切らずに続けた。今度は、警告のような口調だった。

「六年も海外にいたんだ。もう分かってると思うが、邪魔はするな。夏子を傷つけるようなことも、絶対にするな」

私は一瞬、言葉を失った。周囲の雑音すら、耳に入らなくなった。

電話はもう切れていた。

私はただ、乾いた笑いを漏らした。

彼の警告なんて、まったくの無意味だった。私は何もするつもりなんてない。

ただ陽翔と一緒に、静かに暮らしたいだけ。二人を養える仕事を見つけて、それで十分。

空港を出る時、私は帽子のつばを深く下げた。

十八歳の頃のあの情熱は、もうどこにも残っていない。

まさか、たった六年で、こんなにも落ちぶれるなんて……自分でも想像していなかった。

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