10年越しの恋は一番の親友に奪われた第2話
第2話は約1,179文字で、このサイトに収録された3章の冒頭章のひとつです。
パーティーの最後は、悠人のプロポーズで最高潮に達し、会場は割れんばかりの盛り上がりを見せていた。
皆が我先にと中心へ駆け寄る。まるで、その幸せな瞬間を一瞬たりとも見逃したくないと言わんばかりだった。
そんな中、私だけがくるりと踵を返した。
拳を固く握りしめ、皆の前では決して涙をこぼさなかった。
人混みを抜け出し、非常階段の扉を開ける。
そこでようやく、力尽きたように膝をついた。
理不尽さ、悲しみ、悔しさ。ありったけの感情が押し寄せてくる……
理解できない。
どうして10年間積み上げてきた関係が、こうも簡単に奪われてしまうのか?
なぜ恋人と親友の二人に同時に裏切られるのか?
それ以上に、悪いことなんて何一つしてこなかった私が、なぜこんな目に遭うのか?
もしかすると、本当に私が悪くて、価値のない人間なのか……
暗がりの中で、ついに堰を切ったように涙があふれ出した。
自分の手の甲を噛み締め、声が漏れないように必死で耐えた。誰も知らない非常階段で、ひとり絶望に沈んでいた。
不意に、後ろの扉が開いた。
怯えて頭を抱え、泣きじゃくりながらつぶやいた。「見ないで、お願いだから、私を見ないで……」
しかし、叱責や嘲笑が返ってくることはなかった。相手は一言も発さない。
数秒だけそこに佇むと、彼はジャケットを脱いで私にそっと被せてくれた。
ほとんど気づかないほど淡いコロンの香りが、そっと私を包み込む。
男性のジャケットは、まるで外の世界を遮る壁のようだった。すべての喧騒から切り離されたようなその温もりに、言葉では言い尽くせないほどの安心感を覚えた。
やがて足音が去り、扉が閉まる。
彼は何も言わずに立ち去ったのだ。
しばらく服にくるまって泣き続け、ようやく呼吸を整えた。
お手洗いでメイクを直す。目が赤く腫れているが、注意して見なければ異常には気づかないはずだ。
落ち着いたところで、手元に残ったジャケットをまじまじと見つめた。
まず、悠人のものではない。あのクズ男が着ている上着は、今朝私が着るのを手伝ったからだ。
それに……見覚えがある気がするし、やけに高級感がある。
一体どこで見たのだろう?
疑問を抱えたまま、私はその服を抱えてパーティー会場に戻った。
入り口で会場を見渡すと、冷房の効いた室内で同僚たちは皆、スーツや上着をしっかり着用している。
最後に視線をメインテーブルの席に移した。
社長や幹部だけが座る特等席。社長である怜の姿を捉えると、白シャツは新しいが……上着は……
着ていない。
息が止まるほど驚いた。
嘘でしょ?非常階段で服を貸してくれたのは、社長?
口を押さえて呆然としていたその時、遠くで幹部と話していた怜がこちらを向き、まっすぐ私と目が合った。
さらに彼は、シャンパングラスを持つ手で、ふわりとこちらに向かって軽く杯を掲げた。
誓ってもいい。自分のからだが石のようになっていくのを、私は確かに感じた。