共テ当日に殺される?死に戻って復讐モード第2話
第2話は約1,646文字で、このサイトに収録された3章の冒頭章のひとつです。
前世では、あの道が水没することを知っていたから、僕は必死になってみんなに早く出発するよう頼んでいた。
それほど急いだにもかかわらず、みんなは危うく試験を受け損ねるところだった。
そして今、僕の忠告がなかったせいで、みんなは前世より20分も遅れて出発した。
この状況からまだ共通テストに間に合うなんて、奇跡でも起きない限りあり得ない。
車に乗った後,駿は申し訳なさそうな顔で、飴を取り出して僕に差し出した。
「ごめん、神崎。俺のせいだよ!みんながテストで緊張しないようにと思って、出発前に飴を買おうと思ってさ」
僕が言い返すより早く、朝香がその飴を奪うと、駿を抱き寄せてなだめた。
「駿は何も悪くないわ。どうして謝るの?利己的な人間に、駿が買ってくれたものなんて食べる資格ないわ!」
ほかのクラスメートたちも口々に駿を慰めた。
「そうだよ駿、自分を責めないで。俺たちはみんな、自分から残って待ってたんだから」
「ほんのちょっと遅れるくらい、何の問題もないよ。お前がいつも俺たちのことを思ってくれるから、俺たちがこんな時に見捨てるわけないだろ!待たずに出発しようだなんて言い出すやつとは考え方が違うんだよ!」
彼らの冷ややかな言葉に、僕は皮肉な笑みを浮かべた。
せいぜい笑っていればいい。
この先に待っていることを知った時、まだそんな呑気なことを言っていられるか、楽しみでしようがない。
たった一個の飴が、彼らの人生でもっとも貴重な瞬間を奪うことになるのだ。
今口の中でする甘さが、何百倍もの苦みになって返ってくるに違いない。
彼らは飴をなめながら歌を口ずさみ、共通テストを遠足かなにかと勘違いしているようだ。
しかしすぐに、何人かが事態のおかしさに気づいた。
周囲の車が増え、バスが全く進まなくなったからだ。
「道が水没してるみたいですね。渋滞もかなりひどいので、迂回しないと間に合わないかもしれません」
バスの運転手が深刻な顔で言うと、騒がしかった車内は一瞬で静まり返った。
朝香は信じられない様子で叫んだ。
「そんな……絶対に嘘でしょ!どうしてこの道で渋滞なんて起きるのですか?」
皆は一気にパニックになった。
「どうしよう!共通テストを受けられなかったら、私の人生はどうなるの?」
「運転手さん!早くなんとかしてくださいよ!遅刻なんかできません!」
運転手は困り果てて首を振った。
「もっと早く辿り着きたいなら、地下鉄に変えるか、水没した道を歩くしかないですね」
僕は静かにみんなの様子を見つめていた。
前世では、みんなが渋滞に巻き込まれたと聞いた母が、すぐに会社から車を何台も手配し、全員を無事に試験会場へ送り届けたのだ。
ところがその恩に対して、クラスメイトたちはネット上で、母が送迎の見返りに一人あたり2万円もの請求を強要したという根も葉もない嘘をついた。
そんな恩知らずの連中のために、再び母に連絡して助けを求めるなんてことをするわけがない。
その時、隣で駿が自信満々に言った。
「みんな慌てないで。近道を知っているよ。それなら絶対に、確実に入試に間に合う」
それを聞いて、皆は魔法にでもかかったように、すっかり安心しきった顔になった。
どうして皆は、駿の言葉だけはそんなにも信じ切るんだろう?
心の中で答えは分かっていた。皆にとって僕は、嫉妬ばかりをする心の狭い人間でしかない。
駿こそが、彼らが心から慕うリーダーのような存在だった。
僕はみんなの宿題や身だしなみを厳しくチェックするが、駿はそんなことはしない。
母が購入したクラスメイト全員分の共通テスト予想問題集よりも、駿が適当に差し出す飴の方が皆には価値があるように感じる。
僕が掃除当番を駿に割り振るだけでも、嫌がらせだと言われる始末だ。
「やっぱり駿は頼りになるね。困った時に何もしないで声ばかり張り上げているような人とは大違いだわ」
朝香は駿の腕に絡みつきながら、わざとらしく僕を睨んだ。
僕はうつむいたまま、スマホを強く握りしめた。
さて、駿の指し示す「近道」は、一体どんなに素晴らしいものなのだろう?