夫が障害者のふりをして家計を逃れようとしたので、本物の障害者にしてやった第2話
第2話は約1,434文字で、このサイトに収録された3章の冒頭章のひとつです。
私は食事を寝室に運んだ。健二は携帯の電源を切り、私を見上げた。
「由美、母さんが離婚を勧めてきたんだろう?
母さんの言う通りかもしれない。俺みたいな不自由な体の男と一緒にいても、お前の将来のためにならない」
彼は心から言っているように見えた。
前世では、この言葉に心を打たれ、即座に「一生あなたと共に」と誓ってしまった。
その時は気づかなかったが、私と義母の会話はキッチンでのことで、防音の寝室からは聞こえるはずもない。
健二がどうやって内容を知ったのか。自分で立ち聞きしたか、リビングにいた義父から聞いたか、そのどちらかだったはずだ。
私は目を見開いて言った。
「本当なの?離婚したいなら、今日にでも区役所に行きましょうか」
予想外の返事に、健二は一瞬にして表情を変えた。
「由美、お前の母さんのために薬を届けようとして、俺はこうなったんだぞ。
それなのに離婚だって?人でなしもいいところだな」
ふん、もう演技が続かないのね。
せめて区役所まで一緒に行くくらいは演じ続けると思ったのに。
「冗談よ。離婚なんかするわけないでしょう」
前世の借りを返していない。そう簡単には解放してあげない。
「さあ、食事にしましょう」
私は微笑みながら、わざとスープの入った器を震わせた。
熱々のスープが健二の足にこぼれた。
彼は悲鳴を上げ、反射的に足を跳ね上げ、器が床に落ちた。
「由美!火傷させる気か!」
「あら、足が動いたわ......」
布団のおかげで実際には火傷していない。健二の足は白くて滑らか、一点の傷もない。
自分の嘘がばれたと思ったのか、青ざめた顔で】
「由美、これは......」
私は更に強く太ももを叩いた。
「見て!反応があるじゃない。まだ治る可能性があるってことよ」
健二は私が気づいていないと思い、安堵の吐息を漏らした。
「医者の話では手術すれば歩けるようになる可能性があるんだ。
ただ、手術費用が100万円かかるって。由美、治療する気はあるか?」
手術の話は健二と義父が仕組んだ芝居だった。
健二の本当の狙いは、私の持参財産を売らせて新しい家を買うことだった。
持参財産は婚前財産だから、離婚しても健二には一切権利がないのだ。
「するわよ!もちろん治療するわ!」
私は彼の太腿を思い切り叩いた。
健二が叫び声を必死で押し殺す様子が滑稽で仕方なかった。
「でもね、手術にはリスクもあるでしょう。
私の知り合いに下半身麻痺を専門にしている漢方の先生がいるの。まずはそちらで診てもらわない?」
「か、漢方医?そんなの効くのか?」
「効くわよ」
私は笑みを浮かべた。
「昔からの伝統医学だもの。
その先生、どんな症状でも治せるのよ。
もしかしたら、お父さんの耳の具合も良くなるかもしれないわね」
私は手を打ち、さっそく予約を取りに出かけた。
翌朝、出かけようとした時、義母が声をかけてきた。
「由美ちゃん、健二のことを心配するのはわかるけど、漢方なんて当てにならないわ。
やっぱり近代医学の手術を受けた方がいいと思うの」
「それに、お父さんだって二十年以上も耳が不自由なのよ。
いろんなお医者さんに診てもらったけど、どこも治せなかったわ。
これ以上お金を無駄にする必要はないと思うの」
義母は以前、病院の看護師をしていたが、義父が耳が不自由になってからは、生活費を稼ぐために建設現場で働いていた。
義父は病院の医師だったから、前世では健二の偽の診断書を作ることができたのだ。
私は義母の目をじっと見つめて聞いた。
「お母さん、本当にお父さんが耳が不自由だと思ってるの?」