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霧のように消えた愛第2話

第2話は約1,491文字で、このサイトに収録された3章の冒頭章のひとつです。

私は声を立てずに笑った。窓の外の蝉の鳴き声がよく聞こえるほど、室内は静まり返った。

どうしてまだそんな男に期待をかけているのか。

私は深く息を吸い込んで、心の痛みを和らげようとした。

瑞穂が真っ先にうまく計らい、気まずい雰囲気を転換した。

彼女は奈々を軽くたたきながらも、責めない口調で話した。

「奈々、何度言ったでしょ?宏さんって呼ぶよ」

「嫌!宏さんが奈々のパパになってほしい!」

宏は目を伏せて彼女をあやし、目つきに溢れたのは私が一度も見たことない優しさ。

胸が裂けるように痛んで、息を吸い込むたびに喉の奥がいっそう苦しくなっていく。

彼の態度が分かっていたのに、やはり私は悲しくてならない。

彼は奈々をベッドに抱き上げ、弁当箱を開けてスープを渡した。

「奈々ちゃんがいい子だから、このスープを飲んでね。体が元気になれるよ」

宏と瑞穂は奈々の両側に立ち、まるで本当な家族のように見えた。

奈々は素直に一口飲んでから、突然茶碗を床に落とした。

「危ない!」

宏は素早くその親子を庇ったが、私の露わになっているふくらはぎは酷い火傷をし、赤くなってきた。

「辛いよ!」

奈々は泣き喚きながら、そのスープが辛いと叫び続けた。

瑞穂は奈々を抱き締め、涙に暮れて私を見つめた。

「祈香さん、私たちが気に入らないのは分かっていますが、こんな小さな子供にそんなひどい仕打ちをするわけにはいかないでしょう?」

宏もゆっくりと私の前に来て、目の中に怒りを宿している。

「スープに何を入れたんだ?」

私は、つれない目でそれぞれ私を責めている二人を見つめ、平然として言った。

「ただ普通なスープだけです。辛いものは何も入れていません。胡椒だけで味付けしましたよ」

「奈々はまだこんなに小さいのに、なぜ胡椒なんか入れたのか」

何を言っても無駄だと分かっていたが、期待をかけた。

火傷した脛が疼いてきた。私は目から零れそうな涙を抑えた。

これから、この男で泣いたり悲しんだりすることを絶対しない。

「こぼれたスープを早く片付けろ。後で家に帰って新しいのを作って持って来い」

私がその場から動こうとしないのを見て、彼は突然声を大きくした。

「祈香!ちゃんと聞いてるのか!」

そうして言い争っているそのとき、看護師がドアを開けて入ってきた。

「進藤奈々様のご家族はどなたですか」

「私です!」

宏と瑞穂が同時に前に出て、目には気掛かりが浮かんでいる。

「お子様はちょっとマイコプラズマ感染がありますから、熱が下がりましたが、あと数日間病院で点滴をしてください」

その二人は頷き、宏は進んで支払いの明細書を受け取った。

「先生、奈々ちゃんに付き添ってください。費用を心配することはありませんよ」

瑞穂は涙をぽろぽろ零し、感動が目に満ちた。

宏は慰めるために彼女の肩を軽く叩いたが、私を見た瞬間、すぐに顔を曇らせた。

「祈香、進藤先生と奈々ちゃんに謝ったら、このことは水に流してやる」

彼の言葉は鋭い刃のように、私の心を刺し通した。

今、ふくらはぎの火傷の痛みが、心の苦しみに比べたら万分の一にもならない。

六年間も愛していたこの男を見ると、胸が張り裂けるほど痛かった。

私は蒼褪めた顔に、惨めな笑いを浮かべた。

「ええ、謝るよ!ごめんなさい……」

私は、目にいっぱい溜まった涙を零すのを抑えて留めた。

彼のような人間のために、泣く価値もなければ、傷つく価値もない。

宏は一瞬にして呆然とし、私を引き留めようとしたが、私はすっと彼を避けた。

「謝罪も済んだから、傷の処置に行くの」

私はふくらはぎに広がった赤く腫れた火傷を彼に見せると、病室を出ていった。

廊下の壁に寄りかかったら、病室から瑞穂の泣き声を耳にした。

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この目録には次の本の第1章から第3章までが収録されています: 霧のように消えた愛。本の残りは公式アプリでお読みいただけます。

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