3時間で会える?親友を選んだ元彼に報いを第2話
第2話は約1,482文字で、このサイトに収録された3章の冒頭章のひとつです。
航はクスっと笑い、冷ややかな口調で言った。
「佳乃、その手は乗らない。
間違ったなら素直に認めろ。社会に出たら誰も甘やかしてくれないぞ。
あとで寧々ちゃんにビデオ通話で謝れ、さっきのことはなかったことにするから」
一方的に通話が切られ、言い返そうとした言葉が喉の奥に詰まった。
悔しくて手が震えた。今までなら、喧嘩のたびに最後は必ず私が泣いてすがり、仲直りしていた。例外は一度もない。
航、今度こそ、私はもう振り返らない。
寧々が突然私をメンションした。
【@深見佳乃、航くんはホント大人気!サークルの『1年代表』に選ばれた途端、女の子たちに囲まれて連絡先聞かれてたよ。
でも安心して!航くんとはずっと一緒だし、私が24時間見張っててあげるから!
もし浮気なんかしたら、私がぶっ飛ばしてあげる!】
航からの返信は早く、また話題を寧々に戻した。
【後ろの席の男たちだって、お前に気があるんじゃないのか?】
互いのモテ自慢で会話は続き、あっという間に画面が埋め尽くされていく。
私は一瞬で話す気が失せた。
高校の頃から、航と寧々は学校の有名人で、見た目も華やか。どこへ行っても注目の的で、ざわめきが絶えなかった。
私はといえば、ただの地味で平凡な生徒。死に物狂いの努力と勉強だけを武器に、田舎町から少しずつ這い上がってきた人間だ。
航は生まれつきプライドが高く、IQも桁違い。何をやらせても努力なしでトップを取る。
国立物理総合研究所の教授でさえ、彼をこれまで見た中で最も才能のある生徒だと評価していた。
もともと私と彼のような人間が関わり合うはずもなかった。
ただ、ある数学のテストで、私は全力を出し、初めて満点を取った。
一方の航は99点。失ったその1点は、解答の字が汚いという理由で引かれた減点だった。
何をやっても完璧だった天才が、生まれて初めて敗北を味わった。
ある日の午後、彼はガジュマルの木の下に立ち、初めて私を引き止めた。
「深見、だっけ?次のテスト、俺と勝負しないか?」
秋風が吹き抜け、舞い散る落ち葉の中で、私たちの関係は始まった。
表向きはライバル同士だったが、誰も知らないことだが、みんなの注目の的である学年トップのイケメンと、全く目立たないガリ勉が、付き合っていたのだ。
物思いからハッと我に返り、二人のやり取りを見るのをやめてチャット画面を閉じた。
明日は学生会の新メンバー募集がある。選考を受けてみようと思う。
彼らが私を置いていくのなら、私も自分の道を歩むべきだ。
面接対策をしっかり済ませて、ベッドに入ろうとした時、寧々からメッセージが届いた。
【佳乃ちゃん、航くんから生理来たって聞いたよ。また偏頭痛きてない?
無理しないで、痛み止め飲むんだよ、カバンの中に入れてあるから】
バッグのチャックを開けると、手のひらサイズの透明なピルケースが入っていた。
仕切りごとにインデックスシールが貼られ、薬の名前と効能が几帳面に書かれている。
これは寧々が手作りしたものだ。
ピルケースをもらったあの日のことを思い出した。
「じゃーん!何を用意したと思う?佳乃ちゃん専用のお薬箱よ」
寧々は熱のある私の額に手を当て、たしなめるように言った。
「もう、私がそばにいなくなったら、ちゃんと自分の面倒見るんだよ!」
高校時代、私は地元を離れて都会で一人暮らしをしながら学校に通っていた。孤独な日々の中で、寧々は数少ない心の拠り所だった。
……
私はピルケースをじっと見つめ、目頭が熱くなった。
結局、私は薬を口にすることなく、航が差し入れてくれた飲み物ごと、デスクの隅へと冷たく押し遣った。
ただ1粒の薬を断つだけだ、大したことじゃない。